衛生管理

衛生管理について

2021年6月の食品衛生法改正により、原則、全ての食品関連事業者はHACCPに沿った衛生管理に取り組まなければいけなくなりました。

1つの商品を提供するのに、食材を加工・調理・盛り付けと様々な工程を経て作られてますが、HACCPとは、その工程(加熱工程、異物確認)を見過ごしてしまうと食中毒や異物混入といった事故につながる工程をきちんと管理しましょう!という工程を危害分析し、重要な工程を重要管理点として位置付けて管理する仕組みです。

HACCPの取り組みは義務ですが、HACCPの前提(土台)となっているのが、正しい手洗いや施設をキレイな状態に保つ、身の回りの整理整頓といった一般的な衛生管理が基礎となっています。基礎が取り組めていなければ、HACCPの取り組みも無駄になってしまいますので、ここでは一般的衛生管理の注意点について確認しましょう。

一般的衛生管理

一般的衛生管理とは、調理従事者の爪が長くないか、正しい手洗いができているか、施設や設備は清潔な状態か、食材の取扱い等、多岐に渡りますがどういった部分に注意するのが良いか確認していきましょう。

従業員(個人)の衛生管理

服装・身だしな

清潔な状態に保ちましょう。汚れていると食材や食品を汚してしまうリスクが高くなります。

長い髪は纏められいるか

人の髪の毛は健康な人でも1日約100本ほどの髪の毛が抜けると言われています。可能であれば朝ブラッシングを行い、抜けかかっている髪の毛は落とすようにしましょう。また、髪が長いと作業の邪魔になるため、纏められいるとお客様にもスッキリしたイメージになります。作業前に粘着ローラーで取り除くことをおすすめします。

爪は長くないか

爪が長いと隙間に汚れや細菌が繁殖しやすくなります。正しい手洗いを行っていても汚れを落とすことが困難なため、適度に切るようにしましょう。

アクセサリー

従事する際は、指輪・ネックレス・ピアス等の装飾品は、異物混入の原因になるため身につけないようにしましょう。不必要なものは身につけないようにしましょう。

私物

飲料水やスマホ等の私物は、私物置き場を設けて管理しましょう。不必要なものは置かないようにするのが基本です。

施設管理

施設の破損

営業施設の壁や天井等に割れや穴があるとネズミや衛生害虫の侵入を許してしまうため、可能な限り隙間は塞ぐようにしましょう。

照明

調理するのに明るいところで作業する必要があります。営業施設基準では、600ルクス以上と定められています。また、蛍光灯がむき出しの場合、落下等で不意に割ってしまわないように蛍光灯に飛散防止のカバーをつけておくといいかもしれません。ガラスが割れてしまうと予想以上に飛散してしまうため、全て回収するのが困難です。

排水管

配管からの水漏れによって床が水浸しの状態だと汚れから細菌の繁殖に繋がり、しいては衛生害虫を誘き寄せてしまう原因になります。可能な限り床は、ドライの状態を保つことが理想です。床の傾斜等で清掃後乾くのであれば問題ないですが、平坦で時間を置いても乾かない床の場合は、水切り等で水を切るようにしましょう。

グリストラップ

グリストラップは、段階構造でゴミや油を除去する装着ですが、定期的に清掃を行いましょう。清掃頻度は、油の使用量やゴミの量によっても変わるため、各店舗で判断して清掃してください。清掃を怠たると衛生害虫が繁殖したり、配管が詰まり最悪の場合、水漏れを起こしてしまう原因になります。また、ふた裏は清掃を忘れがちになるため、こちらも定期的に清掃するようにしましょう。

手洗い設備

手洗い洗剤・アルコール・ペーパータオル・手洗いマニュアル・ゴミ箱を設置しましょう。必要に応じて爪ブラシを置くのもいいかもしれませんが、従事者全員が使用するため、衛生的に管理が難しい場合は、手洗いの際、手の平に爪を立てて円を描くように洗い落とすといいかもしれません。また、手洗いシンクには不必要なものを置かず、常に手洗いができる環境にして置きましょう。

紫外線殺菌庫

まな板や包丁を紫外線の波長を利用して殺菌するタイプのものになりますが、器具に汚れが付着した状態だと殺菌効果が落ちてしまうため、汚れをきっちり落としたあと殺菌するようにしましょう。また、殺菌庫は庫内の光反射を利用して万遍なく器具を殺菌するため、庫内に不必要なものを置かないようにしましょう。庫内が汚れていても反射効果が落ちてしまうためキレイな状態を保ちましょう。

清掃用具

ホウキ、デッキブラシ、水切り等の清掃用具は、置き場を設けて管理しましょう。その際、できれば食材等のキレイなものとは区別して保管するようにしましょう。また保管する際は、清掃用具の毛先にいつまでも水分が残っていると細菌が増殖する原因となるため、吊り下げて保管するようにしましょう。

包装資材

食材はダンボール、発泡スチロール、木箱等に入って納品することもあると思います。

その他

掲示物に使用するテープ等は、劣化してパリパリになっていることがあります。異物混入に繋がらないようこまめに張り替えるか、テープの選定を行いましょう。
またマグネットについては、小さいものではなく異物混入にならないように大きく目立つものを使用するのがおすすめです。

調理機器の管理

冷蔵庫の管理

冷蔵庫内は様々な食材を保管しますが、汚れたら都度清掃するようにしましょう。
パッキンのカビの付着を放置するとなかなか落としづらいため、パッキンもこまめに次亜塩素酸ナトリウム溶液で拭き取りましょう。
また、パッキンは冷蔵庫を使用していると割れや破れが生じます。割れや破れは、冷気が逃げやすくなったり、破損部分は衛生害虫の住処になることがあるため放置せずにコーティングや交換をしましょう。

まな板・包丁

まな板・包丁は食材と触れる機会が多い調理器具です。いろんな食材を同じまな板で調理すると他の食材を汚染してしまうリスクが高くなります。分類ごとに分けることが望ましいですが、最低限未加熱と加熱した商品はまな板を分けて使用しましょう。

破損した調理器具

ザルのような網目があるものを使用していると網が解れてくることがあります。一度解れるとそこからどんどん広がっていくため、異物混入に繋がるおそれがあります。破損していないか定期的に確認しましょう。

製氷機

氷を作るのに飲食店には配備されていることが多いと思われますが、氷を採取するスコップの取手はいろんな人の手が触れます。そのため、取手が氷と触れないように製氷機に付属されているスコップ置き場、ない場合はスコップ置き場を設置して管理しましょう。
また、製氷機にはパッキンがついていますがこちらもカビや汚れいることがあるため、定期的に清掃しましょう。

調理関連備品の直置き

食器やグラス等食品に使用する備品を床に直置きするともちろん床の汚れが付着しますので、できる限り余計な汚れが付着しないように直置きはしないようにしましょう。また、それらの備品に使用する食品トレーや洗浄機のラック等も不要な汚れを付着させないためにも直置きすることはおすすめできません。

洗剤薬剤の小分け容器

洗剤薬剤類は小分け容器に詰め替えて使用されていることが多いと思いますが、小分けされた容器にも名前を記載して、内容物を目で見て確認してから使用するようにしましょう。
少し事例は違いますが、次亜塩素酸ナトリウムの入った飲料水を提供して食中毒を起こすことがしばしばあります。
誰が見ても分かるように管理することが望ましいかと思います。

金たわし

フライパンの汚れを落とすのに金たわしを使用することもあるかと思います。金たわしは、使用しているとどんどん解れていく傾向にあります。過去にはそうした解れから異物混入に繋がったことがしばしばありました。
金属のため重たく解れが水洗いで落ち切らないまま次に調理した際に異物混入してしまう流れが多いそうです。

カッター

刃折れ式のカッターは折れてしまうことがあるため、1枚刃の物を使用するようにしましょう。

食品管理

食材の直置き

食品が容器に包装されているからといって食品入り容器の直置きはしないようにしましょう。容器に付着した汚れで手指や作業服、作業台に汚してしまいます。一斗缶やバックインボックス入りの油や調味料等、重たく直置きされていることが多いですが、こちらも上述のように多岐に汚れを移してしまいます。プラスチックの板を引いて床から少し高いところで保管し、直接床には置かないことをおすすめします。

調味料の小分け容器

大容量で仕入れた調味料を小分けして使用することもあるかと思います。内容物を色で識別し明記されていないことがあります。醤油やポン酢、ソース類は色での判別が難しく、誤った使用を防ぐために内容物を明記して目で確認して使用するのが基本になります。
醤油には大豆や小麦、ソースには果物類が入っていたりしますので、食物アレルギーの観点から使用間違いをしないように注意しましょう。

洗剤薬剤との区別

食品と洗剤薬剤の保管場所は区分けして保管するようにしましょう。同じ場所で保管して薬剤洗剤が食品へ誤って移ってしまわないようにしましょう。

冷凍食品の解凍

食材を冷凍で仕入れて解凍して使用することも多いかと思います。食材の使用を急がないのであれば、前日から冷蔵庫で保管して解凍するのがおすすめです。使用を急ぐ場合は、流水で解凍するようにしましょう。常温や溜め水解凍をすると解凍までに時間がかかります。細菌が繁殖しやすいため、冷凍されていると思われますので、素早く解凍し、できる限り温度の高い状態が長くならないように注意しましょう。

冷凍冷蔵庫内の食材の管理

詰めすぎ①
たくさん食材を冷蔵庫内に詰め込むときちんと食材が冷えない恐れがあるため、冷蔵庫の食材保管は容量に対して70%くらいまでにしましょう。冷凍庫は問題ありません。

露出保管②
冷蔵庫や冷凍庫内は完全にキレイな場所ではありません。食材が飛散し、細菌やカビで汚れています。冷蔵庫で保管しているからといって庫内に露出して保管すると汚れてしまいますので、ラップ等で包装して保管するようにしましょう。

生食材と加熱食材③
加熱後や調理済み食材と調理前食材がありますが、余裕があれば食材ごとに冷蔵庫を分けて保管するのが望ましいですが、そうでない場合は、出来上がりに近いものを庫内の上の方、調理が必要なものは下の方で保管しましょう。とくに魚や生肉のようなドリップの出る食材で他の食材を汚してしまわないように注意しましょう!

参考:ショーケースのロードラインについて
野菜や飲料などスーパーで使用されていることが多い冷蔵冷凍ショーケースは、冷気の通り道があります。そのラインをロードラインといい、通り道を塞いでしまうと中に入っている商品が冷えないため、商品を積みすぎたり通り道を塞がないようにしましょう。

食材の保管

食材のラベルを確認し、決められた保管方法で保管しましょう。細菌が繁殖しやすかったり、品質が劣化しやすい食材は、冷凍冷蔵で保管することが多いと思います。冷蔵品を常温で保管すると食材が劣化を招いてしまいます。また、調味料類に多いかもしれませんが開封後要冷蔵の食材もありますので注意してください。あわせて期限の設定をご確認ください。

賞味期限・消費期限

仕入れた食材の期限が分かるように管理するようにしましょう。また、香辛料は使用量に対して使い切るタイミングが長くなるため、期限が切れることが多々あります。期限が切れた食材は、品質が劣化しているので使用しないようにしましょう。あわせて期限の設定をご確認ください。

記録管理

温度管理記録

施設内で食材に使用する冷蔵庫は温度を記録し管理しましょう。記録頻度は最低1日1回は確認するようにし、頻度を高くすると異常時、食材のロスを少なくすることができますが、営業に無理のない程度で管理しましょう。また、業務用の冷蔵庫は温度計が標準で付いていることが多いですが、家庭用やストッカーは温度計が付いていないことが多いため、こちらも温度を測れる状態にして記録するようにしましょう。

健康管理記録

従業員の体調を記録し管理しましょう。

HACCP

飲食店など様々な業種に対応した手引書があります。業種に合った手引書をご確認ください。

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