微生物(食中毒菌)

微生物(食中毒菌)について

食中毒に関わる細菌・カビ・ウイルス等の特徴を確認しましょう!
微生物が増殖するには、水と栄養と適した温度が必要です。また、細菌によって好む栄養や至適温度が違います。
細菌によっては、酸素を必要とする好気性細菌や酸素のない環境を好む嫌気性細菌も存在します。
また、ウイルスは何かに寄生しなければ代謝が行うことができないため、生物と非生物の間と考えられています。
様々な環境の中で生活する微生物の特徴を理解して食中毒の予防に繋げましょう!

一般生菌(細菌)

特定の細菌を示すわけではなく、広く35℃程度で増殖する細菌。そのため、大腸菌群や黄色ブドウ球菌など様々な細菌が含まれます。
食品を細菌検査した際は、ざっくり細菌がどの程度いるかの指標になります!
一般細菌は、土壌中や空気中など様々な細菌が含まれるため、非加熱の食品から細菌が検出されることは仕方がないですが、傷みやすいため、低温で管理することで増殖を抑えて、早めに喫食するようにしましょう。

参考・野菜の細菌は基本的に土壌中からの汚染を受け表面に存在します。野菜表面をよく洗い流すことで細菌を落とすことができます。

ここからは経験上の話になりますが、表面がツルツルしているトマトは洗い流すことで菌を落としやすいですが、きゅうりやネギの表面は微毛や凸凹が多く、洗い落とすことが困難なため、とくに傷みやすい印象を受けます。
また、加熱後の食品(揚物、パン)で検出された場合は、加熱後の食品の取り扱いや熱に強い芽胞菌の汚染を疑いましょう。

大腸菌・大腸菌群 

大腸菌は、人や動物の腸内に存在するので、食品から大腸菌が検出されれば、糞便などから間接的に汚染されていることになります。そのため食品の汚染指標として調べることがあります。
大腸菌群は、糞便に無関係で植物、土壌、水などの様々な環境中に存在している菌になります。そのため、一部の食品をのぞき、多くの加工食品で汚染の判定基準としています。

非加熱の食品からは大腸菌群が検出されることがあります。衛生状態の確認を目的とした検査では、大腸菌群が陽性の場合は大腸菌の検査を実施する必要があります。
なお、製造方法(加熱の有無など)や原料、包装の有無などで汚染指標の規格基準が変わってくる場合があります。

食品衛生では、加熱後の製品から検出された場合は加熱後の製造工程で汚染されたと考えられます。そのため、加熱後の食品の取り扱いを見直す必要があります

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌は広く環境中に生息しており、人の体でも皮膚や髪の毛、鼻など多くの場所に生存しています。健康な人でも30%程度の人は、保菌しているといわれています。
黄色ブドウ球菌によって食品が汚染されると、増殖過程においてエンテロトキシン毒素を産生して食中毒を引き起こします。毒素は、耐熱性(100℃、30分)で、通常の加熱調理では無毒化することはできません。また、冷凍下でも安定です。
黄色ブドウ球菌が10万個/gで食中毒の発症毒素量と考えられています。
原因となる食品は、おにぎりが代表的ですが、そのほか人の手で食品に触れる二次汚染から発生することが多いです。

症状

ブドウ球菌による食中毒は発症までの時間が短く食品を摂取してから30分〜6時間ほどで症状が現れます。
症状としては、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などが現れ1~2日で軽快します。
重度の脱水状態になることもあります。

対策

手に付着した黄色ブドウ球菌で食品を汚染させないために手を衛生的な状態に保つことが大切です。
また、手に手荒れや傷があると通常より多くの黄色ブドウ球菌が存在している可能性があるため、作業する際は、素手で行わず手袋を着用するようにしましょう。

黄色ブドウ球菌は、中心温度75℃ 1分以上の加熱で死滅します。しかし、1度産生された毒素は加熱しても無毒化されないため、付着した菌の増殖を遅らせるためにも作った食品は、常温で放置せずに低温で管理し、また作り置きせず早めに提供するようにしましょう。

サルモネラ菌

サルモネラは、人をはじめ、家畜の腸管内、河川や下水など自然界に広く生息しています。また、ネズミや衛生害虫からの感染にも注意が必要です。
一般的には10万個/gで発症しますが、場合によっては少量の菌(10〜100個/g)でも食中毒を発症することがあります。また、乾燥に強い性質があります。
原因となる食品は、牛、豚、鶏などの食肉や鶏卵からの汚染が多い。鶏卵は、2〜3万個に 1個と確率は低いですが卵内部にサルモネラ菌がいる場合があるため、生食する場合のリスクも考えておきましょう!

症状

原因食品の喫食から症状までの時間は6〜72時間で、症状としては腹痛(下腹部)、下痢、発熱、嘔吐を起こします。やや高い熱が出るのが特徴です。動物の腸管内を好む菌のため無症状や症状がなくなっても保菌の状態になる場合も多く、食中毒を広げる原因となります。
症状は2日〜1 週間以上続く場合もありますが、症状は比較的軽く、多くの場合自然治癒により回復します。しかし、幼少期の子どもや高齢者の場合脱水症状により命に係わる深刻な状態になることがあります。

対策

少量で発症することがあるため、食肉や卵などを取り扱った手指や調理器具はそのつど必ず洗浄消毒し、つけないことが重要です。また、卵は購入後、冷蔵庫保管を行いましょう。また付着した菌の増殖を防ぐために食品は常温で放置せずなるべく低温で管理を行いましょう!
サルモネラ菌は、75℃ 1分の加熱で死滅するため、調理の際は食品の中心部まで火が通るように十分に加熱すると有効的です。
そのほか定期的に検便を行い保菌しているか確認しましょう。施設内のネズミ、ゴキブリ、ハエなどの駆除を行うことが大切です。

腸炎ビブリオ

腸炎ビブリオは3%程度の塩分を好む好塩性の細菌で、海水中や汽水域に生息し、海水温度が15〜20℃以上になると活動が活発になります。そのため、暑い時期に漁獲された魚介類には、腸炎ビブリオ菌が付着していることがあり、漁獲後の不適切な取り扱いによって増殖し、加熱不十分な魚介類を食べることで感染します。

腸炎ビブリオ菌は熱に弱く、十分に加熱調理した食品を食べて感染することはありません。
しかし、生の魚介類を調理した後に調理器具などを介して、調理済み食品へ二次汚染する場合もあるため注意が必要です。また、増殖スピードが速いのが特徴の細菌です。ほとんどの場合、発症菌数は10万個/g以上です。

ただ近年は、流通技術の進歩により温度管理や取り扱いが改善されたことにより腸炎ビブリオ感染症は減少しています。

症状

感染すると8〜24時間前後の潜伏期間を経て、激しい腹痛や水様性の下痢、発熱、吐き気・嘔吐などの症状がみられます。通常、症状は1~2日で軽快しますが、高齢の方では重症化することがあり注意が必要です。

対策

十分に加熱(75℃ 1分)すると死滅します。腸炎ビブリオ感染症は主に生の魚介類が感染源となります。とくに海水温度が高い時期に多発するため、夏に魚介類を生で食べるときには直前まで冷蔵庫で保存し、加熱が必要なものは中心まで十分に加熱しましょう。

冷凍された魚介類の解凍は、電子レンジや冷蔵庫の中で行いましょう。水を使う場合は、流水で解凍し、放置しないようにしましょう。

二次汚染を防止するために生の魚介類にさわったら、手をよく洗いましょう。包丁やまな板を使うときは、ほかの食品は使い分けたり、先に生野菜などの加熱しない食品を切り、生の魚介類は後で切りましょう。生の魚に使った包丁やまな板が、調理済みの食品と触れないようにしましょう!
また、食品を保管する際は魚介類のドリップが、生で食べるものや調理済みの食品にかからないようにしましょう。

カンピロバクター

動物の消化管内で生育し、酸素が少しある環境を好む微好気性細菌です。酸素が十分にある通常の大気や、逆に酸素が全くない環境では増殖できません。また、乾燥に弱く、少量の菌数(数百個)で発症するのが特徴です。

原因食品は、食肉やその加工品で、とくに加熱不十分の鶏肉で食中毒が発生することが多いです。そのほか井戸水や湧き水なども原因になります。

症状

食後1~7日で、下痢、発熱、おう吐、腹痛、筋肉痛などをおこします。下痢には血が混じることがあります。子どもやお年寄りの方、抵抗力の落ちている方は、症状が重くなることがあります。
この菌に感染した数週間後に、ギランバレー症候群と呼ばれる手足や顔面のまひなどを起こすことがあるといわれています。ギランバレー症候群は、呼吸筋の麻痺から命にかかわることもあり、注意すべき合併症です。

対策

中心部まで75℃ 1分の加熱をしましょう。生あるいは加熱不十分の鶏肉や内臓肉を食べることは控え、食肉は十分に加熱しましょう。また二次汚染防止のために、食肉は他の食品と調理器具や容器を分けて処理や保存し、使用後洗浄・殺菌を行うことが重要です。

食肉の保管中に増殖することは少ないですが、食肉の保管に際しては他の食品と触れたり、ドリップで他の食品を汚染させないために冷蔵庫内では下の方で管理するようにしましょう。

食肉を取り扱った後は十分に手を洗い他の食品を取り扱いましょう。

セレウス菌

セレウス菌は土壌細菌の一種で、土、水中など自然環境中に広く分布しています。
とくに穀類、豆類、香辛料などはセレウス菌に汚染されていることが多いと言われています。
熱に強い芽胞を形成し、増殖する際に毒素を産生します。食中毒の原因となるのは、嘔吐毒と下痢毒の2種類ですが、日本で発生しているセレウス菌の食中毒はほとんどが嘔吐毒(セレウリド)によるものです。

嘔吐毒は食品中で産生され、食品とともに毒素を摂取することで、食中毒が発生します。熱や酸、消化酵素に強いため、体内では分解されません。下痢毒は菌が付着した食品を喫食し、腸管内で増殖し毒素が産生されます。

原因となる食品は、チャーハン、ピラフなどの焼飯類、焼きそば、スパゲッティなどの麦を原材料とする麺類が多いです。

症状

嘔吐型と下痢型の2種類があります。

①嘔吐型 原因となる食品を食べてから、1~5時間程度で発症します。症状は、吐き気と嘔吐を起こします。下痢が伴うことがありますが、発熱は起こりません。
②下痢型 原因となる食品を食べてから、8~16時間程度で、腹痛及び下痢を主症状として発病します。

嘔吐型、下痢型ともに重症化することは稀であり、大半の事例は軽症です。

対策

通常、一般食品からは10〜1000個/g程度検出されることがあります。この程度の菌数では発症しませんが、熱に強い芽胞を形成するため調理加熱では死滅せず、調理後の食品を室温で放置するとセレウス菌が増殖します。また、1度増殖過程で産生された嘔吐毒素は熱に強いです。そのため、食べ切れる量を調理し、調理後はすぐに喫食するようにしましょう。

やむをえず保管する場合は、中心部まで急冷して冷蔵庫(10℃以下)で保管しましょう。
そのほか食材はよく洗浄してから使用することや下ごしらえ済みの食材も長時間の放置は避けて、冷蔵庫で保管するようにしましょう。

ウェルシュ菌

ウェルシュ菌は、人や動物の腸管、土壌、水中など自然界に広く分布し、酸素のない環境を好み熱に強い芽胞を形成する菌です。また、芽胞を形成する過程で熱に弱いエンテロトキシン毒素を産生します。

食品では食肉(牛、豚、鶏肉など)が保菌していることが多いです。カレーやシチューなどを大きな鍋で大量加熱調理した際、ほかの細菌が死滅してもウエルシュ菌の耐熱性の芽胞は生き残ります。また、食品の中心部は酸素の無い状態になり、嫌気性菌のウエルシュ菌にとって好ましい状態になるため、食品の温度が発育に適した温度まで下がると発芽して急速に増殖を始めます。

食中毒事例としては食べる日の前日に大量加熱調理され、大きな鍋のまま室温で放冷されていた事例が多いです。

症状

潜伏時間は、6~18時間(平均10時間)で、喫食後24時間以降に発病することはほとんどありません。症状は、腹痛、下痢が主で、とくに腹部膨満感を生じることが多いですが、症状としては軽く1〜2日で回復します。

対策

ウェルシュ菌食中毒はある程度の数(10万個/g)まで増殖しないと食中毒が発生しません。ただ、芽胞を形成するため1度増殖した菌を死滅することが困難なため、製造過程で菌の増殖を抑えることが重要です。

野菜はよく洗って菌を落としましょう。
基本は、前日調理を避けて調理した食品はすぐに食べるようにしましょう。大きな鍋で調理加熱後、常温で放置すると冷めるまでに時間がかかり、その間に菌が増殖するため、やむをえず食品を保管する場合は、容器に小分けするなどして中心まで急速に冷やすようにして増殖を抑えましょう。

ボツリヌス菌

ボツリヌス菌は、海、川、湖や土壌に広く存在していて芽胞を形成する菌です。芽胞を形成するため、乾燥や熱に強く、殺菌には120℃で4分以上の加熱が必要なため通常の調理加熱では死滅しません!また、酸素があるところでは増殖できません。酸素の少ない環境化で芽胞から発芽し、その増殖過程でボツリヌス毒素を産生します。

原因となる食品は、缶詰、瓶詰、真空パック食品、レトルト類似食品などがあります。これは、簡易の処理で保存された食品や処理が不十分な自家製の缶詰、瓶詰め食品でもっともよく起こります。

ボツリヌス菌は酸性の条件下(pH4.6以下)では増殖しないため、酸性の食品では毒素が産生されません。ただし、pHが低くてもそれまでに形成された毒素は分解されませんが、80℃30分以上の加熱で毒素は失活されます。

大人の場合、ボツリヌス菌が体内に入っても、他の腸内細菌との競争に負けてしまうため、問題になることはありませんが、乳児の場合は、腸内細菌の環境が整っておらず、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を作ってしまうことがあるため、生後 1歳未満はハチミツを与えないようにしましょう!

症状

潜伏期間は、ボツリヌス毒素が産生された食品を喫食後、 4時間から10日間(多くは8〜36時間)後、吐き気、おう吐、腹痛、視力障害、言語障害、えん下困難(物を飲み込みづらくなる)などの神経症状が現れるのが特徴です。意識ははっきりしていて感覚障害や発熱はありません。重症例では呼吸麻痺により死亡する事例もあります。

対策

ボツリヌス菌の芽胞を死滅させるには、120℃4分以上またはこれと同等の加熱殺菌が必要です。
また、菌が産生する毒素は80℃30分(100度で数分)以上の加熱で失活するため、食べる直前に十分に加熱することは有効である。

包装容器が膨張していたり、開封時に腐敗したような酸っぱい異臭があるときは、食べないで廃棄するようにしましょう。

真空パックなどの密封食品でも、表示を確認して「要冷蔵」、「10度以下で保存してください」等の記載がある場合は、必ず冷蔵庫に保管するようにしましょう。

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